玖堂有羽– tag –
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理性と欲望の天秤3
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだままだ。月明かりで浮... -
理性と欲望の天秤2
「ねえ、私がお邪魔だったら、外に出てくけど?」事情を知っている人のこの発言は、智孝と有羽を赤面させるには充分だった。有羽はそれにプラス、手を左右に勢いよく振っている。「いや、そんな必要ないから! っていうより、里美がいないと困るし」「な... -
イメージカラー
「先輩、バレンタインで俺が言ったこと覚えてる?」この一言で、先輩の顔はみるみる内に赤くなった。反応から覚えていることが予想できるが、どうしても彼女の口から言わせたくなる。先輩は俺から視線を外し、躊躇いがちに口を開く。「覚えてるよ。チョコ... -
強引
ドクン、と一つ大きく心臓が跳ねた。右手首に加わった強い力。そして、あと数センチで触れてしまうほど縮まった互いの唇の距離。射抜くような彼の視線にとらわれた私は、瞬きするのも忘れて彼の言葉を聞いた。「先輩、俺の性別わかってる?」そんな聞かな... -
不意打ち
8月。夏休みという学生の特権を満喫──とまではいかないが、まあまあ楽しんでいる諫美(いさみ)は、何か飲み物をとってこようとキッチンへ向かった。クーラーがきいている部屋にいても、窓の外から大音量のセミの声が聞こえてくれば、汗がにじむくらいの... -
はちみつの時間―寝起きの本音―
「ねえ、遼(りょう)。ひざまくらしてあげる。こっちきて」 自室のベッドの上に座り、有羽(ゆば)はそう言って手招きをした。 年頃の男子としてはおいしいのか困ってしまうのか微妙なシチュエーションだが、せっかくの有羽の誘いとあっては断れない。... -
彼と私と天の川
「はあ……何やってんだろ私」 深いため息をつき、すっかり暗くなった空を映し出している川を見つめながら、有羽(ゆば)はそう呟いた。その視線はどこを定めるわけでもなく、ただ川の奥を向いていた。 今日は久しぶりの下校デート。いつもと雰囲気を変え... -
バレタインのプレゼント
2月14日。この日は朝から皆そわそわしてて、好きな子の行動をお互いに気にしてる。綿飴みたいに甘くてふわふわとした空気に包まれている感じが何だかいい。それに、女の子がすっごくかわいく見えるんだよね。好きな人のために一生懸命になってる姿なん... -
初めてのヒトツ
「もっといっぱいして」と、彼女が願った通り、智孝は有羽が息つく暇を与えない程にキスを繰り返した。いつもの優しいキスではなく、智孝の想いを熱に変えたような深く激しいキスに、頭の奥が痺れるようだった。(いつもの兄ちゃんと違う……どうしよう。キ... -
理性と欲望の天秤
家の留守を丸一日預かる。そういったことは、家族と暮らしていてたまに起こることだろう。それは伊藤智孝(いとうともたか)にも言えたことであり、彼は妹と二人で二日間を過ごすことになった。しかしこの妹、兄に家事をやらせるどころか、揉め事の種を蒔き...