野田実春– tag –
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コーラルリング
『珊瑚の指輪を左小指にしていると運命の相手と出会えます』――私もこの指輪で最高の恋人と巡り会えました――――今度、結婚します。全てはこの指輪のお陰です―― 雑誌の広告にあるこんな言葉を読むと、自分の左手の小指にあるコーラルリングが妙に気恥... -
純白の想い
「お邪魔します」 海白彩は今日も実春の家へ遊びに来ていた。「あら彩ちゃん、いらっしゃい」 玄関先で彼の母親に会う。どうやら急いで出掛けるようで、いつもするちょっとした世間話は今日はお預けらしい。「じゃあ実春、後は頼んだわよ。彩ちゃん、ゆ... -
実を結んだ春の彩り
彼女はぼんやりと携帯画面を眺めていた。 心を占めるのは不安の二文字。 ここ数日、恋人と連絡が取れない事がその原因だ。今一度、彼の電話番号を呼び出すと発信ボタンを押す。「――お留守番サービスに接続いたします」 何度かのコール音の後に続く、... -
大切なこと
ノートに鉛筆を走らせていた玖堂有羽は一区切り付いた所で息をひとつ吐き、うんっと伸びをした。そのままの姿勢で時計を見上げると下校時刻はとうに過ぎている。 驚いて窓の外を見ると辺りは薄闇に包まれていた。「(根(こん)をつめていたわけじゃな... -
好きだよ。
ハァ…。 玖堂有羽(くどう ゆば)は柵に寄りかかり、ぼんやりと飾り立てられたイルミネーションを眺めていた。 本当なら恋人と一緒に楽しむはずだったのに。 最初は小さな擦れ違いだった。 それを修復できないままズレは大きくなり、喧嘩にまで発展... -
いつも。いつまでも。
穏やかな昼下がり。 野田実春はソファに座ってまどろんでいた。 と、スリッパの音がして声が聞こえてくる。「遅くなってごめんなさい…。あら、実春くん。寝ているの?」 何となく起きて返事をするのもかったるかった彼は、そのまま目を閉じていた。 ... -
Sweet Christmas【彩と実春編】
晟(せい)とのツーショットをまざまざと見せ付けられてからも、いつもと変わりなく接していた実春(みはる)だったが、パーティでの彩(あや)の様子にある心配の種を撒いていた。 それは終了時には大きく花を咲かせ、いても立ってもいられなくなった... -
雨上がり
梅雨とはいえ、これで何日間降っているのだろう。そんな溜め息が聴こえてきそうな雨の中、野田実春(のだ みはる)は近所の商店街の中を傘を差して歩いていた。「全く…よく降るよな」誰ともなく呟いてしまうのは、彼の心も晴れることが無いからだろう。自... -
想いを伝えて
色とりどりのイルミネーションが鮮やかに煌(きらめ)いて街の夜を彩(いろど)る。彼らが外へ出た時は、既に辺りは真っ暗だった。「寒~い」暖房の効いていた建物から出てきた為、余計にそう思うのだろう。海白彩(うみしら あや)はそう言ってマフラー...
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